【第10話】誰のための遠隔臨場か?

オピニオン

今、流行りの遠隔臨場とは?

遠隔臨場(えんかくりんじょう)とはウェアラブルカメラやネットワークカメラを使用して、実際に現場行かなくて離れた場所から対面仕事を行うことです。

国土交通省によると「材料検査」「進捗確認」「検査・立会」をリモートで行うこととされています。ウェアラブルカメラとはヘルメットなどに装着して使用する小型カメラのことです。

ハンズフリーで撮影することを前提に作られてるため、両手が使え安全に仕事を進められます。ネットワークカメラとは、インターネットに接続できるカメラのことです。LANケーブルでネットワーク機器に直接接続して使用します。

遠隔臨場の仕組み

遠隔臨場では現場にいるゼネコンの監督がウェアラブルカメラを装着したり、ネットワークカメラを設置したりすることで、現地に行かなくても現場の状況を確認することができます。

例を挙げれば「材料検査」は、通常は発注者や監理者が直接現場に行き、設計通りの材料を使っているかを検査します。一方遠隔臨場の場合、発注者は現場に出向かず、現地のゼネコン監督が装着したウェアラブルカメラで撮影した現場の画面を見て、仕様通りの材料がそろっているか確認します。

仕様書では材料の型番やサイズなどが詳細に定められているので、小さな文字で表記されている型番などは、その部分をクローズアップして発注者が確認できるようにします。

遠隔臨場を導入することで移動のコストと時間の削減が可能です。

現場の遠隔臨場は建設現場の生産性向上に繋がるのか?

建設関連のメディアでは、「遠隔臨場で建設現場の生産性は向上します」とありますが果たして本当でしょうか?監理者に現場に来ていただいて検査をするのですが、検査をするには前もって

①自主検査→②是正記録→③検査書類のまとめ→④現場事務所内での回覧、押印→⑤検査実施という手順をふみます。

では、遠隔臨場のシステムで①〜⑤のどの工程が時間短縮及び効率化になるのでしょう。考えてみればわかるのですが、どの工程も省略、時間短縮、効率化になってないのが分かります。逆に④と⑤の間に機器セッティングという手間が返って増えているのではないでしょうか?

いつも私がコンサル時によく使うフレームワークに落とし入れてみましょう。

・「遠隔臨場システム」で

誰が楽になり→発注者、検査員、設計監理

誰が喜んで→発注者、検査員、設計監理者

決裁権者のベネフィットは?→ゼロとは言わないがそれほどでもないのかも?

以上の結果から、今の遠隔臨場システムは建設現場ではなく、発注者・検査員・設計監理者にとってはベネフィットは大きいが現場自体の生産性向上への効果は少ないと言えるのではないでしょうか?

今の遠隔臨場システムのメリットは?

今の遠隔臨場システムがまったくダメと言ってるのではなく、工事の途中でどうしても発注者・検査員・設計監理者の指示をもらわないといけない時なんかは遠隔臨場でスピーディーに質疑回答がもらえる等のメリットはあります。

ですが現場の真の生産性向上の要因はもっと実際に仕事をする人にあり、現場外部の関係者とのやり取りの効率化はマスコミが騒ぐほど現場の生産性に影響は少ないのではないかと思ってます。

今、建設現場で求められている遠隔臨場システムはこれだ?

現場の生産性向上は監督を含め現場で実際に働くひとの時間短縮や省人化に効果がなければ効果は少ないです。遠隔臨場システムは現場外部の関係者とのリモートではなく

以下の関係性であれば現場業務の時間短縮につながります。

・現場事務所いる監督と現場にいる監督

・現場事務所いる監督と現場にいる協力会社の作業員

・現場にいる監督との遠隔臨場と現場にいる協力会社の作業員

遠隔臨場のメリットは移動時間の短縮です。実際に顔を合わせて打ち合わせをするのが一番ですが、遠隔臨場ですませられるものであれば現場事務所への往復時間、現場内の移送時間短縮につながり、そのぶん本来すべき現場業務に時間を当てることができるので結果的に生産性向上への貢献は大きいです。

ですから、遠隔臨場システムはもっと現場事務所と現場、現場にいるひとどうしで使用することにフォーカスされるべきだと思います。

  • ウェアラブルカメラもしくは360°カメラ
  • 位置情報
  • 通信環境
  • 現場事務所内のモニター

この4つの技術の組み合わせが必須であり、これらの新しい技術の出現、組み合わせに期待するところは大きく、今後の需要は大きくなると日々現場で仕事をしながら感じている次第です。みなさんの新しい技術を待っています。

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