【第11話】現場監督のどんな動きをへらせば時短できるのか

オピニオン

現場監督のしごとの特性から時短につながるICTツールをかんがえる

ICTシステム導入の背景は「働き方改革」の実現であり、目標は時短(残業時間の削減と週休2日の実現)と生産性向上というあい反する二つの目標の両立である。今後も解消される見込みのない人手不足に対して建設業界を魅力ある職場にして人を集めるためにも急がねばならない課題である。時短のための有効なツールをかんがえるには現場監督のどんな行動をへらせばいいのかを考えてみたい。

前提:現場にいるばかりでない監督のしごと

現場監督のしごとはおもに2種類に分けらえます。ひとつは工事に必要な資材や機械の手配やそれにともなう打ち合わせなどを行う工務(こうむ)というしごと。もう一つは工務が段取りした工事をじっさいに現場で行うのが現業(げんぎょう)といわれるしごと。工務グループはデスクワークに1日のおおくをつかい、逆に現業グループは現場にいる時間がながいという特徴があります。では実際に工務と現業の仕事を具体的に見てみましょう。

ステップ1:現業のしごと

1.若手ほど現場にいる時間がながい

現業の仕事はおもに現場が予定通り進んでいるかの確認とか、作業員のしごとのじゃまになる物の移動や要望質問への回答などがおもになります。こういったしごとは一概にはいえませんが経験年数が比較的なくてもこなせるものがおおく、20代を中心とした若手社員が担っている場合が多いです。

2.若手は現場で何をしてるのか?

現場でのおもなしごとは作業員さんのしごとの品質チェックや工程の遅れがないかの確認、ケガしそうな場所や行動がないかのパトロールや騒音や振動で周りに迷惑かけてないかなど現場にいなければできないしごとをしています。

3.事務所にもどるのはいつ?

現業でも段取りや書類整備などはあるので、現場タスクが終わったら事務所へ帰ってデスクワークをします。少しでも定時に終わらせておかないとその分、残業時間にやらなくてはならないので早く帰りたい時なんかはよく事務所に戻ります。

4.ふたたび現場にもどるのはいつ?

しかし、現場にもどった途端、作業員からの電話がなり電話での解決を試みますが、第三者(他の業者)との調整が必要なことがほとんどであり、実際に現場に行かざるを得なくなります。事務所の机に座ってコーヒーを飲もうとした途端電話が鳴ることなんかしょっちゅうであり、往復の手間を考えると現場タスクが終わっても現場でウロウロすることもあるのが現場です。

ステップ2:工務のしごと

1.ベテランほど事務所にいる時間がながい

現業にとちがい工務のしごとは段取りです。数ヶ月先の段取りがほとんどでありミスが工期に大きな影響をもたらしたり、限られた時間しかないことから経験年数のおおいベテランの監督が担うことがおおいしごとです。工務の人がかならず現場にいる時間は朝礼参加後の1時間くらいです。

2.ベテランは事務所で何をしてるのか?

段取りの主なものは工事に必要な資材や特殊な機械の発注です。建物はおもに一品現地生産なのですべてがオーダーメイドであり、製作までの図面の作成、調整、時間がかかります。打ち合わせや図面チェックがほとんどですので事務所にいる時間がほとんどになります。

3.ベテランが現場に出るのはどんなとき?

現場に出るときは自分のしごとに関するところの寸法を図ったり、現場の進み具合と自分の発注した部材にズレがないかなどの確認ですが、彼らの部下のほとんどが現業の若手社員ですので彼らが現場でわからないことがあれば現場に出向いて直接指示することもあります。電話で済ませることが8割、現場に出向くのが2割くらいでしょうか。私の経験からですが。でも一回現場に出れば最低でも1時間は帰ってこれませんし2時間くらいはザラです。

■コラム①:現場に出るのは実はめんどくさい?

現場には事務所の姿のままでは行けません。保護具と言ってヘルメット、安全帯、安全靴、グローブなど装備しなければなりませんし、夏なら空調服、冬なら防寒着もきますからスッと事務所から手軽にってわけにも行かないのが現状ですね。行かなければならないのはわかってますが、保護具の着用や現場までの移動の距離、現場内での高さの移動などがあり体力的なことからもめんどくさいと思ってしまいます。いけないとはわかってますが。

ステップ3:何の時間をへらせばいいのか?

1.意外とながい移動時間

工務と現業の仕事は基本分かれてますが、時には互いに確認しなければならない時がしばしばあり、それが現場でなければならないシチュエーションはよくあることです。

2.事務所と現場の往復

現場の場所によっていちがいにはいえませんが、このような事情から現業も工務も事務所と現場を往復する時間というものがおおく存在するのがおわかりいただけたと思います。敷地の中にプレハブの現場事務所がある場合もありますがその場合は敷地が広く、現場と事務所の距離は長い場合がほとんどであり、また街中では現場の敷地内に事務所を立てるスペースがなく、離れた場所のテナントビルに事務所をかりるのがおおくこれもまた事務所と現場がとおい要因の一つです。

3.体力をうばう現場内の移動

事務所との往復ばかりでなく、現場に入ってからの移動も長い場合が多いです。地下工事があれば深く地中まで降りなくてはならず、高層ビルになれば高いところまで登って降りなければならず夏場なんか体力を結構奪われて、事務所に帰ってからのデスクワークに支障をきたすこともよくあります。

※ステップ1〜3で見えてきたこと

以上のことから、現場と事務所および現場内の移動の時間を減らせればかなりの時間が削減されるのではないかと思われます。単純計算ですが定時のうち2時間移動時間減らせれば2時間、早く帰れるわけであり、これを減らせれば時短への効果は大きいと思われます。

■コラム2:現場の移動にエスカレーターもエレベーターもない

みなさんが建物を使われるときはエレベーターやエスカレーターがあるので移動に体力を消耗するなんて思いもしないと思いますが、建物を作っている途中にはそれらが設置されるのは工事の完成まじわであり、また電気が通るのはまだ先の話ですので階段を自分で上り下りするしかないのが現状です。これも現場に行くのにめんどくさくなる要因になります。

遠隔臨場は現場の救世主になるのか?

1.今はやりの遠隔臨場はどんなものか?

今、建設関連の新聞やネットでよく見かけるのが遠隔臨場です。WEBカメラを使って現地に行かなくても検査や材料の検分などができるということで大いに期待されるICTツールの一つです。しかし今の遠隔臨場はおもに土木の現場で使われており、ペルソナ設定としては発注者や監理者などの外部関係者になっております。

3.今の遠隔臨場で現場の生産性は上がるのか?

遠隔臨場関連の記事には「遠隔臨場で現場の生産性が上がります」といってますがはたしてそうでしょうか?発注者や管理者がWEBカメラの画像をPCで見ながら検収・検査を行うわけですが、現場にいる監督には検査をするのは遠隔であろうがなかろうが時間は同じであり、今までどおり検査の書類等をそろえたりするわけですが、機材の整備や通信環境の調整などの段取りやWEBカメラなども持たなければならないのでかえって負担が増えたのが実情と思います。

3.現場が欲しい遠隔臨場とは?

一概にはいえませんが、工務と現業、もしくは若手監督と作業員のやりとりが遠隔臨場でカバーできるならば今までかかっていた数時間の移動時間が減らせます。その分、工務、現業とも定時でタスクをこなせる時間が増え、結果早く帰れる=残業時間削減につながるものと思います。結果、現場の生産性の向上と時短の両立に大きく近づき、働き方改革実現に大きく前進するものと期待されます。現場と事務所の遠隔臨場を実現させる新しいICTツールの出現に期待します。

遠隔臨場を定着させれない課題とは?

WEBカメラなどネット回線に依存する遠隔臨場は通信環境に左右されます。郊外の現場や地下深くの場所では通信環境が弱くWEBカメラの通信に支障が出るのがほとんどではないでしょうか?またカメラで片手を取られたり、荷物がおおくなったりとまだまだ我々監督のツールとして定着するにはまだまだ改良が必要と思われます。でも実装されれば我々監督が楽になり、よろこぶことは間違いないので開発中のエンジニアの方には大いに頑張っていただきたいと思います。

まとめ

現場業務における移動時間のしめる割合はおおく、ICTツールによって現場に行かずとも意思疎通がクリアできるようになれば時短に大いに効果が高いです。時短というマクロな課題で捉えるのではなく、「移動時間の削減」という具体的な効果をねらえば建設現場での今後の需要は大きいですね。ご安全。

タイトルとURLをコピーしました