この記事を読むメリット
建設業界にあったペルソナ設定を開発前にしっかりすることによって、ブレずに開発を進めることができます。またターゲットと効果をしっかり想定できるので、プレゼンの説得力も飛躍的に向上します。
ゼネコン担当者の意見を取り入れているうちに、なんかはじめのコンセプトや方針とかけ離れていってる気がしてます。このままでいいのかと・・・・
そんな時はペルソナ設定の見直しをしてみてはいかがですか?
ちなみに建設業界の誰をターゲットに開発してますか?
正直具体的にはしてないのが現状です。
お恥ずかしながら・・・・
では、この機会にしっかりペルソナ設定をしてみましょう。しっかりしておけば開発を進めながらもしっかり軌道修正ができ、コンセプトからブレずに最短距離で開発を進めることができます。しかし、一般のペルソナ設定では建設業界で通用しない場合があるので、今回は建設業界あった設定を3つのステップに沿ってチャレンジしてみましょう。
前提
建設業界にはいろんな人が働いてますが、このブログでは現場監督のしごとにスポットを当てて書いてます。
ステップ1:まずはどんな課題があるのかググってみましょう
「お困りごとの解決」が入り口。まずはどんな課題があるのか調べてみましょう。
「建設業界 課題」でググってみる
基本は「課題の解決」。どんな課題が建設業界にあるか調べてみましょう。まずは「建設業界 課題 2021」で検索。コロナ禍の影響も含めてどうでしょうか?
東京オリンピックも終わったけど、駅周辺の大きな工事はけっこう目に付くし、最近は自然災害も多いから河川の補強工事なども多く行われるみたいだし・・・・
東京オリンピックが終わっても、大阪万博、リニア整備、国土強靭化計画、古いインフラの補強工事等などが目白押し。好景気はしばらく続きそうですね。
じゃあ、これからいいこと続きじゃないですか。建設業界は・・・
しかし、そう喜んでばかりではないですね。残念ながら・・・・・ ネットの検索上位の課題を並べてみましょう。
- 多すぎる残業時間
- なかなかとれない週休2日
- 技能に見合わない給与
- アナログで非効率な仕事の進め方
- ストレスの多い職場環境
- 夏暑く、冬寒い
- きたない
- 高い離職率
- 若手の就業者が少ないetc・・・・
一番深刻な課題は・・・・
これだけ課題が多いと正直、建設業界で働きたいと思わないなあ・・・・
これから仕事が増えるのに、新しい人材、特に若い人が建設業界で働こうと思ってもらえないことが一番の問題なんです。
建設業界はこれからどんどん仕事が増えてくのに、かんじんの「働き手」がだんだん減っていく現象が止まらない。つまり「慢性的な人手不足」がいちばんの悩みなんですね。
待ったなしの働き方改革と新3Kの実現
人手不足の解消には新しい人材、特に若い世代のエントリーが必要なんですが、多すぎる働く時間と、なかなかとれない週休2日、年休の未取得、高い待遇とも言えない給与、徒弟関係などの悪い職場環境のせいでなかなか人が集まらないのが現状です。また「働き方改革関連法案」の2024年適用が建設業に迫っているのもあり建設業界としては待ったなしの状態にあるのも知っていてもらいたい現状です。
この現状を打破するために、今まで3K(キツイ、汚い、キケン)と言われた建設業界ですが
今は新3K(給料がいい、休暇が多い、希望のある未来)をスローガンに新しい取り組みも始められてます。
これから予定されている工事はどんどん増えていくのに、人が増えない状況が改善される見込みがなく、少ない人数でたくさんの仕事をこなす(生産性向上)を上げる新しい仕事のやり方の模索が続けられています。
ステップ2のまとめ
建設業界のいちばんの課題は「人手不足」の解消。実現のための課題は以下の2つ
- 残業時間の削減と週休2日の実現
- 今より少ない人数で、今以上の成果を上げる=生産性の向上
ステップ2:それぞれの課題を深ぼりしてみましょう
働く時間を減らしつつ、今より少ない人数で今まで以上の成果を上げないといけないなんて大変そうですね・・・・
そのためには今までと同じ仕事のやり方では成果が出ない。だから新しい働き方、仕事の進め方が求められてます。建設DXでのICTツールの導入が盛んに行われてるのはこういう背景があるからです。
ではステップ1でわかった2つの課題についてもっと深掘りしてみましょう。
残業時間の削減・週休2日の実現
理由は「多すぎる仕事量」です。建物をつくる工事を現場で管理するだけでなく、それと並んで多くの「書類」を作成しなければなりません。日中は現場での工事の管理、事務所では多くの打ち合わせをしなければなりません。そのため書類作成業務は定時以降にすることになってしまします。また現場自体、土曜日、祝日は動いているので自分が担当する工事がある時(ほとんど毎日あるので)は休めないのも現状です。また工事の期間が初めから短すぎる(いわゆる突貫工事)ことも原因の一つです。これに関しては建設業法の改正により適正な工期の確保が義務付けられたので、これから始まる工事については改善されつつあります。
生産性向上への挑戦
建設現場の生産性向上(現場監督について)は製造業みたいに、より多くの製品を作るということとは大きく異なります。具体的には
- 1日かかっていた仕事が半日でできる。または一時間で終わる。
- 二人でしていた仕事が一人でできるようになる
ということです。現場での仕事や打ち合わせの時間、移動の時間を短縮してや日中やる仕事の時間を短縮し、残業時間にこなしていた業務を定時内の時間でこなせるようして早く帰宅できるなる状態のことを言います。
押さえておきたいポイントは
製造業の「生産性向上とは大きく異なる」ということです。大事なことですのでしっかり押さえておいて欲しいですね。
最終ゴールは人手不足の解消
- 家族と晩ごはんが食べれる時間には家に着く。
- 連休が取れて温泉旅行や趣味の時間がつくれる。
- 他産業より給料がいい
こんな人間として当たり前の生活が今まではできなかった建設業界。こんな環境では新しい人が入ってくることはないですね。はっきり言って・・・・
1日でも早く魅力ある職場環境を実現して、新しい人材を多く取り入れ、さらに続く「プチバブル」の状態をこなしていかなければならないのです。建設業界は。
ステップ2のまとめ
残業時間の削減や週休2日の実現、生産性向上が目的であるのは間違いないのですが、最終目標はこれらの課題を解決して、より魅力ある職場環境に変えて、新しい人材(特に若いひと)を取り込んで人手不足を解消することである。
ステップ3:あなたがつくるモノ・システムで課題を解決したらどうなるか考えてみましょう。
建設業界の課題は理解いただけましたか?
それではあなたの技術でどんな課題が解決できるかを考えてみましょう
現場監督の仕事を洗い出してみる
現場監督のしごとにかかる時間や移動時間などが短縮できなければ効果がないということだよなあ・・・・・
具体的にどんな仕事があるのかな、現場監督には。
簡単にリストアップしてみましょう。
主に下記の5つです
- 品質検査(寸法を測ったり、数を数えたり、間隔をはかる。発注したものと同じものか照合するなど)
- 安全点検(機械や道具に異常がないか。ケガしそうな仕事のやり方や機械、設備がないか。またケガしそうな行動をした作業員がいないか。環境を汚していないか)
- 段取り(工事に必要な資材や機械の計画・手配。関係者への打ち合わせ。図面のチェックなど)
- 予算管理(工事の予算をオーバーしていないか。ムリ・ムダなところはないか)
- 工程管理(予定通り工事が進んでいるか、また遅れているところはないか)
何に効果があるか考える
この5つの仕事にかかる時間や移動時間。または少ない人数でできるようになればいいんだな❗️
新しい技術で。
- ✅ 数える。計る。撮影する。照らし合わせる。
- ✅ 異常やエラーがあればタイムリーにわかる。または上司へ報告できる。
- ✅ 打ち合わせや指示、報告
- ✅ 早い、遅い、どこにいるかがわかる
複雑そうに見える現場監督の仕事もシンプルに考えれば、上の4つのカテゴリーになります。
あなたの持ってる新しい技術で「時間を短縮できたり」「より少ない人数でこなす」ことができれば開発する価値、需要は大きくみこまれます。
他の業界で当たり前になってるシステムも建設現場向けにカスタマイズすれば応用できたりするわけですね。
その課題を解決した後、建設業界がどうハッピーになるか考える
いっけん複雑そうに見える現場の仕事も他産業と似たようなところもあるんですね。対象となるものが違うだけで・・・
これなら自分の技術もカスタマイズすれば、応用できそうな気がします。
現場監督の「お悩みごと」と自分の技術でできる「解決策」が一致したようですね。
でもこれだけではまだ入り口でしかありません。
どういうことですか・・・?
最終目的は「開発したモノ・サービス」が現場で採用されるかどうかなのです。採用されなければせっかくいいものをつくっても儲かりませんよ。
大事なのは「ベネフィット」。要するにあなたがつくった新しいモノ・サービスで現場がどうハッピーになるかをイメージしてもらうことがポイントです。
ステップ3のまとめ
現場監督の「お困りごと」と自分が持つ技術での「解決策」がスタートライン。しかし実際に建設現場で採用されなければ価値がないと同じであるので、そのためにももっと「ベネフィット」をアピールするのがポイント。
ベネフィットとは、「そのモノ・サービスを使うことによって現場がどうハッピーになるか?」ということです。
ゴール:具体的な効果をテンプレートに入れてみましょう
ではあなたのつくる新しいモノ・サービスがどう現場をハッピーにするのかを文字起こしするために下記のテンプレートに書き込んでみましょう。
テンプレート①:「それを使うと誰が楽になって・・・・」
実際に使う現場監督を想定してみましょう。具体的には現場を一日中走り回ってる若い監督さんが想定しやすいですね。えらんだ仕事がどうなったか?つまり彼がどう楽になったかを文字起こししてみましょう。もちろん想定の範囲でOKです。
「このシステムを使うと、鉄筋の間隔や本数を数える時間が半分ですみます。また工事写真の整理も同時にできるので結果、彼の鉄筋検査はずいぶん楽になります・・・・とか?二人で検査してたのが一人でもできるようになります・・・とかいいですね。
テンプレート②:「それを使うと現場がどうハッピーになり」
もし若い監督さんの鉄筋検査が短い時間でスムーズに終われば・・・・・
- 鉄筋業者さんへの指示が早くになり、手直しが早く終わる。
- 手直しの報告(是正報告)が早く終わることで、監理者(検査者)からの承認作業も早くなる。
- 鉄筋検査がスムーズになることによってコンクリート工事の段取りが早く取りかかれる。
- よって工事全体の遅れを取り戻したり、工程を前倒しできたりする。
ひとつの仕事が楽になる事による、工事関係への波及効果は大きなものになります。これは大きなアピールポイントになりますので、しっかりイメージして文字起こししましょう。
テンプレート③:「決裁権者には〇〇のベネフィットがある」
ところで、あなたのシステムを採用するかどうかを決めるのは誰か?
つまり決裁権者は誰かわかりますか?
いつも打ち合わせしてるゼネコンのICT推進部の担当者さんでしょ?
※ここがいちばん大事なところです❗️しっかり読んでください。
勘違いしがちなので、はっきり認識していただきたいのですが、採用を決めるのは、みなさんがいつも打ち合わせしてるゼネコンの担当者ではないのです。彼らは新しいシステムを探し出したり、開発したり、現場に紹介するのが仕事で、現場でシステムを使うか使わないかを決める権限はありません。
じゃあ、誰なんですか?
建設現場の所長さんです。
システムを採用するかどうかは、所長さん次第?
みなさんが打ち合わせしてるICT推進部の担当者さんは所長さんへ、あなたのシステムを提案しますが採用するかどうかの決裁権は持ってません。ですから、現場の所長さんに良さがわかってもらうことが「最後のトドメの一押し」に必要となってます。現場の所長さんは現場の責任者でもあり、最終的に原価管理の責任を持つ財務大臣でもあります。ですから、いくら若い監督さんに気に入ってもらっても所長さんにベネフィットを感じてもらわないと採用はされません。残念ながら・・・・
所長さんのベネフィットとは?
今まで、所長さんの会社からの評価は工事利益の確保とお客さんと約束した日までに工事を問題なく終わらせることでしたが、今は働き方改革の時代ですので、利益確保・無事故・工期内完成は当たり前。評価の基準は現場のスタッフの労働時間の量にウェイトを置かれるようになりました。いくらいい仕事をしても、自分の現場の若い監督が休みなく、毎日遅くまで残業残業してたとしたら、その所長さん自体の評価がグッと落ちる結果になります。
決裁権者である所長さんへのベネフィットは、自分の現場の監督の残業時間の減少と週休2日の取得率の向上です。最終ゴールはここがポイントですのでしっかり文字起こししましょう。
◆結果、監督さんの残業時間は減って、週休2日の実現・年休の消化率もぐっと上がります❗️これをプレゼン資料に堂々と書けるように深掘りしましょう。
まとめ
最後にペルソナ設定のポイントを整理しておきましょう
1:どんなん課題が解決できるのか選択する
2:個人のみをターゲットにするだけではダメ。
3:三段階で考える ①個人が楽になる→②現場全体が喜ぶ→②決裁権者のベネフィットがある
今回のペルソナ設定の3つのステップはいかがでしたか?現場監督の仕事にフォーカスしましたが、現場で働く職人さんをペルソナ設定することも可能です。「エンドユーザーは誰か?」ということをはっきりさせて、彼らが持ってる「お悩みごと」を自分の技術で解決するということが基本です。この作業をしないと開発中に触れるいろんな情報に左右され結局何を作りたかったのか分からなくなる時があります。そんなリスクを未然に防ぐためにも、このペルソナ設定の3つのステップにエネルギーと時間を投資していただきたいと思います。では、次の講座で会いましょう。ありがとうございました。