【第14話】現場かんとくが直伝。建設業界でバズる建設DX開発講座③結局AIに何してほしいの?現場監督は。(建設現場でのAI活用を現場監督目線で考える?)

建設DXツール開発講座
この記事を読むメリット

・現場かんとくの視点がAIに何を期待してるのかがわかります。どんな業務に効果のあるAIシステムを作ればいいのかのヒントになれば幸いです。

この記事を読んでほしいひと

・自社のAI技術で施工管理ツールをつくりたいひと

・すでに開発したが、ゼネコンへのプレゼンや建設現場実装まで至ってない方

・AIに限らず、施工管理ICTツールをつくるエンジニアさん

クライアントAさん
クライアントAさん

AIをうまくいかせば、現場かんとく仕事の「時短・省人化」に効果があり、働き方改革への追い風になるのでは?と思うけど。具体的にどの仕事にしぼればいいのかなあ・・・

HM社長
HM社長

施工管理におけるAIの期待は大きいですね。最近、建設系のメディアにAIの記事が目立ちますが、社会インフラ(橋、道路、上下水道)維持管理で数例の実装が確認できます。今、建設業界は「働き方改革」への取り組みの真っ最中。

AIをどのように使ったら現場かんとくの「働き方改革」=「時間外労働削減」になるのか、の深掘りはされてないのではないでしょうか?AIに何をしてもらえれば現場の仕事の「時短・省人化」に効果があるのか考えてみましょう。

前提:ゼネコンがAIに飛びつく背景

HM社長
HM社長

近い将来直面する深刻な人手不足と「働き方改革」に始まる生産性向上の機運の高まりがあります。これまで監督が果たしてきた役割の一部をAIに置き換えることで人手不足を補い、さらに施工管理タスクの消化量を高めようと目論んでます。

社員の「労働時間削減」に効果があるのは、派遣社員をやとって仕事を分散させることですが、派遣社員の数も今は足りてない状況ですし、人件費がかさむので限界があります。

近い将来、さらに深刻になる人手不足の中、建設事業を継続するためにも、現場かんとくの確保や彼らをサポートするシステムの構築がゼネコンの喫緊の課題です。

そのサポートシステムの一つに「AIの技術」が注目されてます。AIの力をかりながら我々現場かんとくが工事を進める日が近いでしょう。

思ったほど、今のAIにできることは少ない・・・・

AIに関する書籍や動画など調べてみましたが、今のAIがやれることは少ないです。日常的にやってることをAIが変わりにやれると期待するのは無理な話です。では、どの仕事を切り取って「今のAI」にやってもらうのか?がポイントになります。

働き方改革の時代だから、当然「時短」、「省人化」につながらないといけないよね。

「今のAIにできること」と現場かんとくの「時間や人数のかかる仕事」か・・・

どんな仕事をAIにさせればいいのかな?

HM社長
HM社長

大事なのは「今のAIがどこまでできるのか?」を理解することです。今のAIでできることって何がありますか?

クライアントAさん
クライアントAさん

ビックデータからの情報選択と解析とか

画像認識からの情報分析かな?

HM社長
HM社長

過去の建設現場の事例はゼネコンは多く持ってますが、自分の現場に活かせるデータを取り出す手間と時間がないため、生かしきれてないのが現状です。もったいない話ですね。AIが自分の現場に活かせそうなデータを探し出しタイムリーに提示してくれればおおいに助かります。

また、図面や写真、撮影動画から分析し、リスクを監督に教えてくれるシステムがあると嬉しいです。つまり、欲しい情報を探す「時間」と、現場でリスクを見つけ出す「移動」をAIが担うのです。このような業務は残業時間に消化する割合が多いので「残業時間削減」に効果あります。

★ここがポイント❗️→結局、「判断するのは監督である」のは変わらない

映画やメディアの影響か、「AIが監督の代わりに仕事をする」といった「AI擬人化論」で考えてしまいますが、AIにそこまで期待するのは無理だと使い手に認識させることがポイントです。結局のところ、得た情報を最終的に選択、判断、行動にするのは「かんとく本人の技量」であることに変わりがありません。今は超がつくほどの情報化社会です。素早く「自分の現場に活かせる情報」を得て、目の前の現象に生かす力、すなわち「情報リテラシー」がビジネススキルとして重要視される時代です。「現場かんとくの情報リテラシー」のスキル向上のために、AIの力を借りて自分の現場運営に有益な情報をタイムリーに得て、最適な現場運営のジャッジメントをするというのが現実的な「AI活用」の定義と考えます。

「AIがやれること」と「監督がしてほしい仕事」をまとめてみました❗️

映画やメディアの影響で「AIが監督の代わりに仕事をする」と考えてしまいますが、今のAIにできることを前提に監督がAIしてほしい仕事をピックアップします。

        1. この記事を読むメリット
        2. この記事を読んでほしいひと
      1. 前提:ゼネコンがAIに飛びつく背景
        1. 思ったほど、今のAIにできることは少ない・・・・
        2. ★ここがポイント❗️→結局、「判断するのは監督である」のは変わらない
        3. 「AIがやれること」と「監督がしてほしい仕事」をまとめてみました❗️
  1. AIにやってもらいたいこと①:ビックデータから自分の現場に使える情報を出してもらい、すばやく現場に活かしたい
    1. 過去の「同じような現場」の好事例・不具合を自分の現場に反映させる
    2. 過去の似たような工事のデータを施工計画に反映させる
    3. 過去の似たような工事がどのように利益を出した、もしくは利益を損ったかを実効予算に反映できる
    4. 過去の「同じような現場」のデータからこれから始まる現場に最適な建設機械を探してくれる
  2. AIにやってもらいたいこと②:画像認識からリスクを予見し、起こりそうな不具合をアラートしてほしい
          1. 現場監督の仕事とディープラーニングによる画像認識は相性がいい
    1. 画像分析で「数える・測る・照らし合わせる」作業をしてくれるAI
          1. 配筋検査だけではもったいない
    2. 画像分析で「忘れ・ズレ」を発見し、教えてくれるAI
    3. 画像認識で「現場のルール」に外れた動きを教えてくれるAI
  3. AIにやってもらいたい仕事3:ひと(監督)がすると非常に時間がかかる(めんどくさい)作業や忙しくて見落としがちな作業
    1. 記録・点検・照合
    2. 判定
    3. 観察
      1. リストアップされた作業にどんなAI作業がいいのか?
  4. AIを現場実装するには?
        1. AI単体ではなく、何と組み合わせるかが実装のポイント
          1. どうすれば所長さんを納得させ、「現場実装」につながるのか?
        2. 最後にかんとく社長のつぶやき🍃

AIにやってもらいたいこと①:ビックデータから自分の現場に使える情報を出してもらい、すばやく現場に活かしたい

HM社長
HM社長

ゼネコン各社には「過去の工事」から得た多くのデータあります。またネット上にも多くの情報が存在します。しかし自分の現場で活かせるデータを探し出すには手間と時間がかかりすぎて、全く手をつけていないのが現実です。なんと、もったいないことでしょう。

タイムリーに「自分の現場で使える情報」をチョイスしてかんとくに提示する作業をAIが自動にやってくれると便利ですね。それをどう活かすかは「かんとくのリテラシー」次第。

これを「監督の最適な意思決定」のお手伝いをする意志決定支援型AIと名付けます。

過去の「同じような現場」の好事例・不具合を自分の現場に反映させる

・似たような現場でQCDSE(品質・コスト・工程・安全・環境)上、どんな好事例・不具合があったのか?またこの現場で再現性のある好事例や起こりうるリスクをAIが自動的に提示。また、新たにアップデートされた情報もすぐに提示書てくれると助かりますね。

過去の似たような工事のデータを施工計画に反映させる

自分の現場と似たような工事(土地、用途、階数、面積など)をビックデータから導き出し、AIが監督に提示します。「うまく工事が進んだこと」や逆に「事故につながったこと」などの情報を今から始まる現場にフィードバックでき、最適な施工計画を作るサポートをAIがしてくれます。

過去の似たような工事がどのように利益を出した、もしくは利益を損ったかを実効予算に反映できる

所長は現場をスタートさせる前に「実効予算書」を作成し、会社の承認を受けなければいけません。しかし工事を始めるには多くの段取りが必要です。しかし監督もがまだ集まってない状況ですので忙しい毎日が続きます。そんな状況で所長さんは予算書を作らねばならず、夜遅くまで残業されてるのが現状です。そんな中AIが、過去の物件データから「たたき台」的な実効予算を作成し、所長は修正のみの時間で「実効予算書」が作成できるようになると便利ですね。しかし、実効予算のデータは企業にとって「マル秘中のマル秘」データ。よほどのセキュリティがないと実現は難しいですね。

過去の「同じような現場」のデータからこれから始まる現場に最適な建設機械を探してくれる

工事をどのように進めるかの考えをまとめたものが「施工計画」。施工計画において、定地式の建設機械の選定は重要なポイントになります。大きさ、能力、コスト面を考えて現場で設置できる条件内で「一番力があって、コンパクトで、リース代が安い」を選ぶのが監督の腕の見せ所です。工事の途中で「届かない」、「力が足りない」となっては大問題ですので機械の採用には慎重に慎重を重ねる重要な仕事です。ビックデータから過去の似たような工事でどんな建設機械が採用され、うまくいった点、行かなかった点などAIがしてくれれば、施工計画にかかる時間と監督の数がグッと減らせます。

HM社長
HM社長

着工時は時間に余裕がありそうですが、スタッフがそろてなかったりして所長と派遣社員だけで工事の準備をしているケースは少なくありません。「施工計画書」や「実行予算書」は工事が始まる前に作って監理者や会社に提出し承認を受けるのが原則ですが、先の工事の段取りや目の前の工事を進めながらの状態ですので、デスクワーク仕事は「残業時間」にこなさなければなりません。AIが自分の現場にあった事例、資料をビックデータから抽出、提示してくれれば選択と修正のみになり大幅な「時短」と「省人化」につながります。

AIにやってもらいたいこと②:画像認識からリスクを予見し、起こりそうな不具合をアラートしてほしい

HM社長
HM社長

現場かんとくの仕事は、「リスク管理」。予測される「不具合(リスク)」に前もって対策をたてゼロにするのがデキるかんとくの定義です。しかし、かんとくひとりで見れる範囲は限界があり、2021年度では死亡事故が増えているとのデータがあります。そこで定点カメラやウェアラブルカメラからの画像をAIが分析→「不具合(リスク)」につながりそうな現象、人の行動を発見→アラート→対策実施の新しいサイクルの一役を担ってほしいですね。このようなAIを画像分析リスク発見アラート型AIと名づけました。

現場監督の仕事とディープラーニングによる画像認識は相性がいい

建設現場では、品質・安全などで「見た目」で判断する場面が多いのでAIのディープラーニングによる画像認識の需要は大いにあります。

画像分析で「数える・測る・照らし合わせる」作業をしてくれるAI

・検査数がいちばん多いのは配筋検査ではないでしょうか?設計図通りに鉄筋工が組み立ててるかどうかを検査します。設計図には鉄筋の太さ、加工寸法、組み立てた鉄筋のピッチなどをスケールを使って測りますが、シンプルに考えれば鉄筋の数を数える、太さを測る、設計図と照らし合わせる作業です。あらかじめAIにインプットされた設計図とかんとくが撮影した鉄筋の写真と照らし合わせて、NGであればアラートしてくれるだけでいいのです。ここでポイントなんですが、問題ないものまで知らせてくれる必要はないということです。なぜなら鉄筋の検査の記録には「いいところ」は書かないからです。「悪いところ」を発見し、「どういうふうに直させた」のかだけ記録すればいいのが配筋検査です。

配筋検査だけではもったいない

画像分析で「忘れ・ズレ」を発見し、教えてくれるAI

・建設現場での品質ミスのほとんどが以下の通りです。

①設計図にあるものが取り付けてない

②設計図と違うところに付けてしまってる

この2点を防ぐためにVRやAR技術で現場に施工図を投影するサービスが登場してますが、ホロレンズを付けて現場内を歩くなんて危険すぎて現実的では無理です。現地で撮影された画像からAIが図面と照らし合わせて「無かったり」「ズレてたりしてたら」アラートしてくれたら大いに助かります。繰り返しですが「問題ないこと」まで知らせてくれる必要はありません。

画像認識で「現場のルール」に外れた動きを教えてくれるAI

現場には全員が守らないといけない「ルール」があります。法律で定められたものから、現場独自のルールもあります。ルールがある理由は安全に関して言えば「事故・ケガ」を発生させないためです。現場の災害で多いのは以下のよう4つです。

・高いところからの墜落、転落

・開口部からの転落

・機械に挟まれる

・吊り荷物の落下

これらの災害は「ルールを守る」ことによって防げたのがほとんどです。監督や周りのものが注意してあげればいいのですが忙しさのあまり全てには目が届かないのが現状です。安全帯の未使用、落ちる可能性のある開口部の存在、重機の旋回範囲や吊り荷直下の立ち入りなどをAIが画像認識→アラート(かんとくや運転手)し、是正指導をする。死角や目の届かない場所への「第3の目」にAIが担ってくれると助かります。

現場内の人の流れの分析から、バリケードの必要箇所や最適な作業通路の提示などもいいですね。

HM社長
HM社長

画像分析で配筋検査のNG箇所をアラートするのはAIですが、具体的にどう直すかを職人さんに指示するのは監督であるのに変わりありません。検査の速度が早まるのと同時に、NG箇所の見落としがなくなるメリットは品質上大きいです。また、不安全行動する作業員を知らせてくれたり、人の動きの分析から有効な安全通路の提案などもAIがしてくれることで事故やケガを未然に防げることにつながります。

AIにやってもらいたい仕事3:ひと(監督)がすると非常に時間がかかる(めんどくさい)作業や忙しくて見落としがちな作業

HM社長
HM社長

最後に、日頃してますが時間めんどくさくて、忙しさを理由にやってない仕事をピックアップしてみましょう。

記録・点検・照合

・コンクリート打設後のじゃんか、コールドジョイント、出来型の記録

・山留壁の変異測定の記録←KOM(キングオブめんどくさい)

・鉄骨建て方起こしの精度確認、記録

・杭材マーキングと設計図の照合及び杭ナンバーと杭材の確認

・老朽化した構造物の損傷具合の点検(ひび割れ、剥離)

判定

・生コン車におろし時のワーカビリティの判定

・ハイテンションボルトの回転量

・工場、現場溶接の精度の判定

・杭間ざらい時での杭芯ずれの判定

・コンクリート構造物の補修が必要なひび割れ長さ、幅の判定

観察

・コンクリート構造物のひび割れの観察

・道路表面のひび割れと道路下の空洞の発見と観察

・上下水道の漏水

・建設機械の稼働状況のデータ化

・CN(カーボンニュートラル)貢献のエビデンス集め

リストアップされた作業にどんなAI作業がいいのか?

・「記録、点検、照合」は繰り返しだったり、ルーティン的(毎日)のものが多いです。また経験が少なくてもできる仕事ですので、必然的に若手の仕事になります。これらに貢献できれば「若手かんとく」の時短、省人化の効果が大きいです。逆に「判定」については、ある一定の基準をベテランがインプットして、それを越えればアラートというスタイルが適してます。「観察」については大量の画像データから解析、リスクを予測しアラートするスタイルがいいでしょう。

AIを現場実装するには?

AI単体ではなく、何と組み合わせるかが実装のポイント

・AI単体では難しいので既存のシステム、機械とどう組み合わせるかがポイント。高所での作業であればドローンがですし、観察であれば現場にあって移動しないもの。すなわち定置式カメラが考えられます。ウェアラブルカメラ+位置情報での情報取得も考えられます。嫌がれると思いますが(笑)

どうすれば所長さんを納得させ、「現場実装」につながるのか?

建設現場への実装の決済権者はゼネコンのICT推進室の人ではありません。現場の「所長さん」です。今は「働き方改革」が2年後の2024年を4月から始まり、今まで青天井だった「時間外労働」に年間720時間(月平均60時間)の規制が法律として適用され、違反すれば罰則の対象となります。現在、所長さんたちの頭の中は、部下が「残業時間月60時間以内」と「週休二日取得」を平等にとらせれるかでいっぱいなのです。正直、A Iどころでないのが実情ですが、AIがどの業務の「作業量・時間・人数」に効果があり人事から言われる「時間外労働削減」の成果につながるかをきちんとプレゼンできれば、現場実装への道が一気に広がります。

①AI擬人化論を払拭させる

②「意思決定支援型」か「画像認識アラート型」どちらが得意か?

③効果のある「かんとく仕事」を選ぶ

④具体的な効果のイメージ化

⑤所長が納得する(ベネフィットのある)へのプレゼン

のフローをしっかり踏んで、「時間外労働削減」に効果のあるAIを作ってもらいたいですね。

最後にかんとく社長のつぶやき🍃
HM社長
HM社長

最新の研究でようやく、AIが何を根拠に判断下かわかる程度になってきた程度ですが、メディアの影響か「AIによる施工の自動化」が建設業界で一人歩きしてる感じがします。現場で事故が起これば、現場の誰かが責任を取らされます。死亡事故が起これば、「業務上過失致死罪」で監督が告訴されることもあります。そのようなことを考えれば、AIに丸投げするのはむずしく、現実的には「AIは監督の最適な判断を支援するツール」と位置付けて導入を進められると予想できます。メディアの「AI擬人化論」「AI万能論」に惑わされずに、現場監督目線のAI開発→実装をめざしていただきたいと思います。

ご安全に⛑

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